フランス人技術者は日本の発電事業者に「これには触るな」とブラックボックスを残していった。日本人はその封印された謎の箱を開けてしまった。そこには…

その昔、日本は電力関係の技術の

一部をフランスから教わっていた。

 

日本人は富岡製糸工場と同じように、

ぐんぐん技術を吸収して完璧に

発電所を動かした。 

一年後、フランス人技術者たちは

本国に引き揚げていったんだが…… 

 


発電所の制御装置には当初から

封印された謎の鉄の箱が接続

されていた。 

そしてフランス人たちは、その箱に

ついてだけは一切教えてくれなかった。

 

立ち去るときにも

 

「その箱は絶対にさわらないこと、

 こわれたら呼んでね」

 

と言い残していったそうな。

さて日本人たちは言いつけを

守ってはいた。

 

気にはなるけど、

下手にいじって発電所を停めたら

ことだ。

 

だが技術者たちはあの手この手で

調べて、やがて出した結論は……

この箱、まったく何もしていない

んじゃないの?

そして技術者たちは会社にかけあった

自分たちの技術力にかけて、

これは何もしていない、我々を

信用してこれを外させてくれ、と。

 

さわらぬ神になんとやらという

議論もあったが、

やっとゴーサインが出た。

そしてその当日、万が一にそなえて

万全の体勢を整え、みんながかたず

をのんで見守る中で、その箱から

のびるケーブルが切られた。

 

すると…… 

何も起きなかった。

溶接されたその箱を開けてみると、

中は空っぽだった。

 

本当に、

それはただの箱だったのだ。 


一同は安堵のため息をついた。

技術者たちは胸をはる一方で、

 

「フランス人め、たばかったな!」

 

といきりたつ人もいた。 

 

でも……

とぼくにこの話をしてくれた電力

エンジニアは言うのだった。 

その箱をはずしたとき、日本の

電力は独立できたんです。

 

そのとき日本はフランスの呪縛から

逃れ、電力技術を完全に自分たちの

ものにしたんです、と。

 

あれはフランス人が日本に置いて

いってくれた、卒業試験だったん

ですよ、と。